うつで休職・退職するときに関わる制度は、傷病手当金・健康保険・失業給付・住民税・自立支援医療の5つです。やっかいなのは、それぞれ窓口も期限もバラバラで、しかも期限の短いものほど、いちばん動けない時期に重なることです。この記事では、その全体像を時系列で並べ、それぞれ「いつまでに」「どこへ」出すのかだけを先にまとめます。個別の手順は、各項目からくわしい記事へつなぎます。
私自身、休職から退職までのあいだ、この順番が分からないまま一つずつ人に聞いて進めました。同じ遠回りをしなくていいように、自分が知りたかった順に並べ直しています。
先に結論:期限がある手続きは4つだけ
制度はたくさんありますが、「過ぎると取り返しがつかない期限」があるのは次の4つです。まずここだけ押さえれば、あとは落ち着いてからで間に合います。
| 手続き | 期限 | 出す先 |
|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 | 協会けんぽの都道府県支部(または健康保険組合) |
| 国民健康保険への加入 | 退職日の翌日から14日以内が原則 | 市区町村の窓口 |
| 失業給付の受給期間の延長 | 働けなくなった日から30日を過ぎたら、できるだけ早く | 住所地のハローワーク |
| 傷病手当金(退職後の継続給付) | 退職日に出勤してしまうと権利ごと消える | 加入していた健康保険 |
最後のひとつだけ毛色が違います。これは「出す期限」ではなく、退職日の過ごし方そのものが条件になっているという話です。詳しくは後述します。
① 休職しているあいだ:傷病手当金
働けない間の生活費を支える中心になる制度です。協会けんぽによると、支給の条件は「業務外の病気やケガの療養のための休業であること」「仕事に就くことができないこと」「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」「休業した期間に給与の支払いがないこと」の4つをすべて満たすこととされています。
- 金額の目安:支給開始日前12か月の標準報酬月額を平均し、30で割った額の3分の2(協会けんぽの計算式)
- もらえる長さ:支給を開始した日から通算して1年6か月(令和4年1月1日以降は、途中で働いた期間は数に入らない通算制)
- 最初の3日間:待期期間として支給されない。連続して3日休んで初めて成立する
申請書は本人・会社・医師の3者が書く形式です。会社に頼まず自分で進める方法もあります。
- 傷病手当金は自分で申請できる|医師の記入ページを会社に渡さずに済む
- 傷病手当金の電子申請のやり方|協会けんぽ・必要なものと注意点
- 診断書をもらうまでの流れと、医師にどう伝えたか
- 診断名が「うつ病」でも「適応障害」でも変わらないこと
② 退職を決めたとき:いちばん取り返しがつかないポイント
退職後も傷病手当金を受け取り続けられる「継続給付」という仕組みがあります。協会けんぽは、被保険者期間が継続して1年以上あり、かつ資格喪失日の前日(=退職日)に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることを条件としています。
ここが落とし穴で、あいさつのために退職日に出社すると「受けられる状態」ではなくなり、継続給付の権利が消えます。良かれと思ってした行動で、その後1年分の生活費を失うことがある。私はこれを直前に知って、予定を変えました。
③ 退職した直後:20日と14日のカウントダウン
健康保険をどうするか
選択肢は「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養に入る」の3つです。任意継続は、協会けんぽによると退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることが条件で、退職日の翌日から20日以内に手続きが必要、加入できるのは2年間です。国民健康保険は原則14日以内。どちらが安いかは前年の所得と扶養家族の人数で変わるので、両方の保険料を出して比べるしかありません。
失業給付は「今すぐもらう」ものではない
失業給付(基本手当)は「働ける状態で求職活動をしている人」が対象です。療養中はそもそも対象外。そこで使うのが受給期間の延長で、大阪労働局の案内によると、病気・ケガなどの場合は本来の受給期間1年に最長3年を加えて先送りできます。申請は離職日の翌日(働くことができなくなった日)から30日を過ぎてから、できるだけ早急にとされています。
住民税の請求は、収入が止まってからやって来る
住民税は前年の所得に対してかかります。つまり働けていた年の分の請求が、働けなくなってから届く。金額を知らずにいると、いちばん苦しいときに大きな納付書が来ます。
④ 療養が長引くとき:通院費を下げる
通院と薬が続くなら、自立支援医療(精神通院医療)を使うと窓口負担が変わります。厚生労働省の資料では、通常3割の自己負担が1割に軽減され、1か月あたりの負担にも世帯の所得に応じた上限が設けられるとされています。受給者証の有効期間は1年以内で、更新の申請はおおむね有効期間終了の3か月前から受付が始まります。
退職して健康保険が変わったときは、自立支援医療のほうにも届け出が必要です。ここは見落としやすいところでした。
全部を1枚にすると、こうなる
| 時期 | やること | 窓口 |
|---|---|---|
| 休職に入る前 | 診断書をもらう/会社に休職を申し出る | 主治医・会社 |
| 休職中(毎月) | 傷病手当金の申請(1か月ごとが一般的) | 健康保険 |
| 通院が続くなら | 自立支援医療の申請 | 市区町村 |
| 退職日 | 出勤しない(継続給付の条件) | — |
| 退職〜14日 | 国民健康保険に入るなら手続き | 市区町村 |
| 退職〜20日 | 任意継続にするなら手続き | 協会けんぽ支部など |
| 退職後30日〜 | 失業給付の受給期間の延長を申請 | ハローワーク |
| 退職後しばらくして | 住民税の納付書が届く | 市区町村 |
| 療養中ずっと | 傷病手当金の申請を続ける(通算1年6か月まで) | 健康保険 |
順番に迷ったら
私が実際にやってみて思ったのは、最初にやるべきなのは制度の勉強ではなく、「期限のあるものだけカレンダーに入れること」でした。調べ物は体力を使います。全部を理解しようとすると、それだけで一日が終わってしまう。上の表のうち、日付が入るものだけ先にスマホのカレンダーに入れて、あとは必要になったときに一つずつ読めば十分でした。
どこに相談していいか分からないときは、無料で使える窓口から順に整理した記事もあります。
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📝 制度の説明はここまでです。実際に自分で申請してみて戸惑ったことは、こちらの記事に別でまとめています。手続きの流れではなく、やってみて初めて分かったことのほうです。
制度の内容は改正されることがあり、また加入している健康保険組合や市区町村によって運用が違うことがあります。この記事は私が調べて確認した範囲のまとめで、最終的な判断は必ず各制度の公式の窓口で確認してください。体調のことは、ひとりで抱えずに主治医や相談窓口に相談してみてください。
この記事で参照した公式情報
- 全国健康保険協会「傷病手当金」
- 全国健康保険協会「任意継続」
- 大阪労働局「受給期間の延長」
- 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」

