体調を1日1行で記録するテンプレートです。項目は睡眠・頭痛・食事・できたこと・しんどさの5つだけ。診察ではこれをそのまま見せていて、限られた時間を「どうするか」の相談に使えるようになりました。コピーして使える1行の形も載せています。
うつ病を経験して、二度目のあとに始めてよかったと思っていることがあります。体調を記録することです。
といっても、日記のようなものではありません。1日1行、決まった項目を埋めるだけです。凝ったことをすると続かないので、あえて素っ気ないものにしています。
この記事では、実際に使っている記録の形と、それが何の役に立ったかを書きます。そのまま真似できるように、項目もそのまま載せます。
※これは一人の当事者の工夫であり、診断や治療の代わりになるものではありません。
なぜ記録するのか
理由は単純で、体調が悪くなると、記憶があいまいになるからです。
診察で「最近どうですか」と聞かれても、答えられるのはせいぜい直近2〜3日の印象だけでした。しかも、その日の気分に引っぱられます。調子のいい日に受診すれば「まあまあです」と答えてしまうし、悪い日なら「ずっとダメです」と答えてしまう。
記録があると、そこが変わります。「2週間前から寝つきが悪い日が増えている」といった変化が、感覚ではなく事実として見えるようになりました。
そしてもう一つ。うつの症状が出ているときは、判断力そのものが落ちています。「まだ大丈夫」と自分では思ってしまう。記録は、その自己判断を補ってくれる外側の目でした。
記録している項目
使っているのは、この5項目だけです。メモアプリでも紙の手帳でも構いません。
| 項目 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| 睡眠 | 就寝と起床の時刻、途中で目が覚めたか | 23:30-6:00 / 2回目が覚めた |
| 頭痛 | あったか、なかったか、いつごろか | 夕方から あり |
| 食事 | 3食食べられたか | 朝△ 昼○ 夜○ |
| できたこと | 一つだけ。小さいことでいい | 洗濯物を干した |
| しんどさ | 10段階の数字を一つ | 6 |
コピーして使えるように、1行の形にするとこうなります。
8/24 睡眠23:30-6:00(2回覚醒)/頭痛:夕方あり/食事:朝△昼○夜○/できたこと:洗濯/しんどさ:6
なぜこの5項目なのか
項目を絞ったのには理由があります。
睡眠を最初に置いているのは、私の場合、睡眠の変化が他の症状より先に出ていたからです。寝つきが悪くなる、途中で目が覚める、早朝に目が覚める。この段階で気づけると、悪化する前に手を打てます。
頭痛を入れているのは、私にとって分かりやすい体のサインだったからです。ここは人によって違うと思うので、自分にとっての「先に出る体の症状」に置き換えてください。
できたことを一つだけ書くのは、記録を減点方式にしないためです。この時期は、できなかったことばかりが記憶に残ります。一行あるだけで、その日が空白ではなくなりました。
しんどさの数字は、あとから振り返るときに効きます。文章は読み返すのが大変ですが、数字なら並べるだけで傾向が見えます。
記録と一緒に決めておいたこと
記録するだけでは、実は足りませんでした。「ここまで来たら動く」というラインを、元気なうちに決めておくことが必要でした。
私が決めているのは、こういうものです。
| この状態が続いたら | やること |
|---|---|
| 夕方の頭痛が3日以上続いたら | 次の通院を前倒しする |
| 睡眠の乱れが2週間続いたら | 主治医に必ず報告する |
| 朝、起き上がるのに時間がかかる日が続いたら | 業務量の調整を相談する |
| しんどさの数字が1週間平均で上がってきたら | 記録を持って受診する |
なぜ事前に決めるのかというと、調子が落ちてくると「まだ大丈夫」と判断してしまうからです。判断力が落ちている状態で判断しないために、元気なうちにルールにしておく。これは二度目の経験から学んだことです。
実際、このラインを決めてからは「これはもう報告する段階だ」と機械的に動けるようになりました。自分の感覚だけに頼らないほうが、結果的に早く手を打てます。
診察のときの使い方
記録は、診察の場でそのまま見せています。
口頭で説明しようとすると、どうしても直近の印象や、その日の気分に引っぱられます。記録を見せると、そこが省けて、限られた診察時間を「どうするか」の相談に使えるようになりました。
見せ方は、スマホの画面をそのまま見てもらうだけです。きれいにまとめ直す必要はありませんでした。むしろ、加工しないほうが正確に伝わります。
続けるためのコツと、やめどき
- 書けない日は空欄でいい。 全部埋めようとすると続きません
- 時間を決める。 私は寝る前にしています。歯磨きのついでくらいの位置づけです
- 振り返るのは週に一度でいい。 毎日読み返すと、悪い日ばかり目についてしまいます
- 人に見せる前提で書かない。 見せるのは医師だけ、と決めておくと素直に書けます
そして、これは大事なことですが、記録することが負担になったら、やめていいです。
症状が重い時期には、1行を書くことすら難しいことがあります。実際、私も休職直後には何も記録していませんでした。この方法が役に立ったのは、少し動けるようになってからです。
記録は、自分を管理するための道具ではありません。悪くなる前に気づくための道具です。それ自体が新しい自己否定の材料になるなら、本末転倒だと思っています。
おわりに
二度目に体調を崩したとき、私がいちばん強く思ったのは「なぜもっと早く気づけなかったのか」でした。
振り返ると、サインは出ていました。ただ、そのときの自分には見えていなかっただけです。日々の感覚は、当日の気分に簡単に上書きされてしまいます。
1日1行のメモは、それを防ぐための、いちばん軽い手段でした。もし今、少し動けるようになってきた段階にいる方がいたら、試してみる価値はあると思います。
紙とアプリ、どちらがよかったか
私はスマホのメモアプリを使っています。理由は単純で、寝る前に手が届くところにあるからです。
紙の手帳も試しましたが、書くために起き上がる必要があるのが、当時の私にはハードルでした。一方で、紙のほうが「スマホを見て別のことを始めてしまう」危険がないという利点もあります。
| メモアプリ | 紙の手帳 | |
|---|---|---|
| 書き始めるまでの手間 | 小さい | 起き上がる必要がある |
| 脱線の危険 | SNSなどに流れやすい | ない |
| 振り返りやすさ | 検索できる | めくるだけで一覧できる |
| 診察で見せる | 画面を見せるだけ | 持参する必要がある |
どちらが正解ということはないと思います。選ぶ基準は「しんどい日でも手が伸びるか」だけでした。
家族に見てもらう場合
記録を家族と共有するかどうかは、悩ましいところです。
私の場合、数字だけを共有していた時期があります。全文を見せると、書くときに無意識の遠慮が入ってしまうからです。「今日は6」とだけ伝える。それでも、家族の側からすると変化は十分に伝わったようでした。
逆に、家族から見た様子を教えてもらうのも役に立ちました。自分では調子がいいつもりでも、外から見ると「先週より口数が減っている」といった変化が分かります。自己申告だけだと、良いほうにも悪いほうにも評価がぶれます。
ここは家庭の事情によると思うので、無理に共有する必要はありません。ただ、記録があると「なんとなく心配」ではなく「先週より数字が上がっている」という具体的な会話ができるようになりました。
記録をやめた時期もある
正直に書いておくと、私はこの記録を一度やめています。
調子が良い日が続いたときに「もう必要ないな」と思ってやめました。そして、次に下がってきたときに気づくのが遅れました。
いま思うのは、記録がいちばん役に立つのは調子がいい時期ではなく、その少しあとだということです。調子がいいときの記録があるからこそ、下がったときに「前と比べてどうか」が分かります。
とはいえ、一生続けるものだとも思っていません。しんどいときに支えになる道具として、必要な時期に使えばいいのだと考えています。
※この記事は個人の工夫を紹介したもので、診断・治療の代わりになるものではありません。記録の内容や受診のタイミングについては、主治医とご相談ください。

