休職に入ってすぐの頃、私が一番検索していたのは「休職中 何をする」でした。会社に行かなくていいはずなのに、何もしていない自分が怖くて、何かしていないといけない気がしていました。
結論から書くと、休職中の過ごし方は時期によってまったく変わります。同じ「休職中」でも、最初の数週間と、3か月経った頃では、できることも、やるべきことも違いました。ここでは私自身が実際にどう過ごしていたかを、時期ごとに分けて書いてみます。
※これは一人の当事者の体験談で、医学的なアドバイスではありません。回復の経過には大きな個人差があります。
最初の数週間:とにかく何もできなかった
休職の初日、私は「明日から何をしよう」と考えていました。読もうと思って積んでいた本もあるし、家の片付けもしたい。時間ができたのだから、少しは有意義に使いたい、と。
実際には、何もできませんでした。
朝、起きられない。起きても頭が働かない。テレビをつけても内容が入ってこない。本を開いても同じ行を何度も読んでいる。スマホを見ていても、気づくと画面が消えていて、自分が何分そうしていたか分からない。そういう日が続きました。
当時いちばんつらかったのは、体がしんどいこと以上に、「何もしていない自分」への罪悪感でした。会社の人は今日も働いているのに、自分は寝ているだけだ。給料をもらう資格がない。そう考えると、休んでいるのに全然休まっていない状態になります。
この時期に振り返って思うのは、罪悪感を消そうとしなくてよかった、ということです。消そうとすると余計に強くなります。「今は罪悪感がある状態なんだな」と、ただ横に置いておく。それくらいしかできませんでしたが、それでよかったと思っています。
1か月前後:生活のリズムだけを整えることにした
しばらくして、少しずつ「起きていられる時間」が増えてきました。とはいえ、何かを生み出せるわけではありません。
この時期に決めたのは、目標を一つだけにすることでした。「生活のリズムを、少しだけ戻す」。それだけです。
具体的にやっていたのは、次のようなことでした。
- 朝、決まった時間にカーテンを開ける(起きられなくてもいい)
- 1日3食、内容は問わず食べる(食欲がない日はゼリーやスープでも)
- 夜、眠れなくても布団に入る時間だけは固定する
- 眠れないときは、無理に寝ようとせず一度布団から出る
最後の「眠れないときは布団から出る」は、あとから調べて知ったのですが、不眠への対処として知られている考え方に近いようです。布団の中で「眠れない」と焦る時間が長いほど、布団が「眠れない場所」として体に記憶されてしまう。だから、眠くなるまで別の場所で過ごす。私の場合も、これを始めてから、布団に入るときの憂うつさが少し軽くなりました。
逆に、この時期に「毎日30分散歩する」のような目標を立てたときは、3日でできなくなって、また落ち込みました。できなかったときにダメージを受ける目標は、この時期には向いていなかったのだと思います。
2〜3か月:少しだけ体を動かし始めた
症状が少し落ち着いてきてから、運動を始めました。24時間営業の小規模なジムに入会して、軽いランニングや腹筋などを合計45分ほど、週に3〜4回。半年ほど続けて、体重は6キロほど落ちました。
ただ、これは「落ち着いてきてから」だったのが大きかったと感じています。症状が重い時期に同じことをしていたら、たぶん逆効果でした。実際、うつの状態が重い時期に無理な運動を課すのは望ましくない、回復の兆しが見えてから短時間・低強度で始めるのがよい、という考え方が一般的なようです。
24時間営業のジムを選んだのにも理由があります。日中は人が多くて気後れするけれど、深夜や早朝ならほとんど誰もいない。「人に会わなくていい」というだけで、行くハードルが大きく下がりました。
「動けるようになった」と「働ける」は、まったく別だった
ここが、私にとって一番の誤算でした。
ジムに行けるようになり、買い物にも行けるようになり、家族と出かけられるようになると、「もう治ったのでは」と思えてきます。周りから見ても元気そうに見えるので、「そろそろ復帰できそう?」と言われることもあります。
でも、パソコンに向かって1時間集中する、複数の相手とやり取りをする、締め切りのある仕事を段取りする——そういう「仕事のかたちの負荷」に耐えられるかというと、まったく別の話でした。私の場合、日常生活が普通にできるようになってからも、しばらくは長い文章を読むだけで疲れていました。
この差を自分で理解しておかないと、「動けるのに働けない自分」を責めることになります。私は一度そこで落ち込みました。
終盤:次のことを少しずつ考え始めた
体調が上向いてきた頃、資格の勉強を始めました。人のキャリアを支援する分野の講座で、もともと関心があった領域です。
ただ、これも「元気になったから始めた」というより、「これなら少しずつ進められそうだから始めた」という感覚に近いです。締め切りがゆるく、進み方を自分で決められて、途中で止まっても誰にも迷惑がかからない。そういう性質のものだったから続けられました。
逆に、この時期に転職サイトを見始めたときは、少し早すぎたと感じました。求人を見ると、どうしても「今の自分では通用しないのでは」という考えが出てきます。情報を集めること自体が、体力を使う作業でした。
いま振り返って思うこと
休職中の過ごし方について、私が実感として持っているのは、次の3つです。
- 最初は「何もしない」が正解の時期がある。何かをしようとすること自体が負荷になる
- 次に整えるのは、成果ではなく生活のリズム。できなくても落ち込まない目標にする
- 「動けること」と「働けること」は別物なので、混同しないほうがいい
そして、これが一番大事だと思うのですが、回復の速さは人によってまったく違います。私の場合はこうだった、というだけの話で、もっと早い人も、もっと時間がかかる人もいます。他人の回復のペースと自分を比べても、あまりいいことはありませんでした。
いま休職中で、何もできない自分を責めている方がいたら、少なくとも私の場合は、その時期があったうえで少しずつ戻ってきた、ということだけお伝えしたいです。
休職中によく聞かれること
会社からの連絡はどうしていたか
これは早い段階で決めておいてよかったことです。休職に入るとき、連絡は月に一度、メールで、担当者を一人に絞る、という形にしてもらいました。
休職中に会社から電話が来ると、着信を見ただけで動悸がすることがあります。誰から、どんな頻度で、どの手段で連絡が来るのかがはっきりしているだけで、その不安はかなり減りました。
逆に、決めずにいた時期は「いつ連絡が来るか分からない」状態が続いて、スマホを見るのが怖くなりました。
SNSは見ていたか
見ていました。そして、あまり良い結果にはなりませんでした。
同僚や同世代が仕事の成果を投稿しているのを見ると、比べる気がなくても比べてしまいます。「自分だけが止まっている」という感覚は、この時期の心にはこたえます。
途中から、アプリをホーム画面から外しました。消すのは抵抗があったので、開くのに一手間かかる場所に移すだけ。それだけでも見る回数はかなり減りました。
人に会っていたか
最初の時期はまったく会えませんでした。家族以外と話すこと自体が負荷でした。
少し回復してからは、会う相手を選ぶようにしました。基準は単純で、「近況を聞かれても平気な相手かどうか」です。悪気なく「今どうしてるの?」と聞かれることが、当時はいちばんこたえました。
昼夜が逆転したときはどうしたか
一度、完全に逆転しました。焦って一気に戻そうとして、余計に体調を崩しました。
うまくいったのは、就寝時間ではなく「朝の光を浴びる時間」だけを固定する方法でした。眠れた時間に関係なく、決まった時間にカーテンを開ける。眠くなったら昼寝はする。それを続けているうちに、少しずつ夜に眠くなるようになりました。
ここも、一気に戻そうとしないことが大事だったと思います。
※この記事は個人の体験に基づくもので、治療の代わりになるものではありません。過ごし方や復職の時期については、必ず主治医や産業医と相談しながら決めてください。

