「休職って、どれくらいで戻れるものなんだろう」。これは私が休職に入ってすぐ、いちばん知りたかったことです。
調べても出てくるのは「個人差があります」という当たり前の答えばかりで、実際の経過がどんなふうに進むのかは分かりませんでした。
そこでこの記事では、私自身の経過を時期ごとに表にまとめました。あくまで一人の例なので、そのまま当てはまるものではありません。それでも「こういう順番で戻っていくことがあるらしい」という見取り図としては、何かの役に立つかもしれないと思っています。
※これは一人の当事者の記録です。回復の経過には大きな個人差があります。復職の時期は必ず主治医・産業医と相談して決めてください。
時期ごとの経過を一枚の表にすると
まず全体像です。横に長い表なので、スマートフォンでは横にスクロールしてご覧ください。
| 時期 | 体調の感じ | できたこと | できなかったこと |
|---|---|---|---|
| 受診前 (働きながら) | 夕方から夜の頭痛、抜けない倦怠感、胸の痛み、胃のむかつき | 出社はできていた。仕事も一応こなしていた | 休みの日に回復できない。好きだったことを楽しめない |
| 休職直後 (最初の数週間) | 一日の大半を横になって過ごす。頭が働かない | 食事と最低限の身支度 | 起き上がる、本を読む、テレビの内容を追う、予定を立てる |
| 1か月前後 | 起きていられる時間が少し増える。波が大きい | 決まった時間にカーテンを開ける。1日3食 | 外出、人と会う、集中を要すること全般 |
| 2〜3か月ごろ | 日によっては「調子がいい」と感じる日が出てくる | 買い物などの短い外出。軽い運動を始める | 長時間の集中。先のことを考えること |
| 半年ごろ | 日常生活はほぼ普通に送れる | 週3〜4回の運動を継続。勉強を始める | 仕事と同じ密度の負荷。人と長時間やり取りすること |
| 働き始めてから | 最初は好調。しばらくして症状が戻った | 通常勤務 | 以前の働き方をそのまま再開すること |
最初の数週間:想像していたのと全然違った
休職に入る前、私は「時間ができるのだから、本でも読もう」と考えていました。実際には何もできませんでした。
文字が頭に入らない。同じ行を何度も読む。テレビをつけても内容が入ってこない。気づくとスマホの画面が消えていて、自分が何分そうしていたのか分からない。
この時期にいちばんつらかったのは、体のしんどさ以上に、何もしていない自分への罪悪感でした。休んでいるのに、まったく休まっていない状態です。
あとから思うのは、この時期に「何かをしよう」としなくてよかった、ということです。何かをしようとすること自体が負荷になる期間が、確かにありました。
1か月前後:目標を一つだけにした
少しずつ起きていられる時間が増えてきた頃、決めたのは「生活のリズムだけ整える」ということでした。成果は求めない。それだけです。
具体的にやっていたのは、次のことだけです。
- 朝、決まった時間にカーテンを開ける(起きられなくてもいい)
- 1日3食、内容は問わず食べる
- 夜、布団に入る時間だけは固定する
- 眠れないときは、無理に寝ようとせず一度布団から出る
逆に「毎日30分散歩する」という目標を立てたときは、3日でできなくなって、また落ち込みました。できなかったときにダメージを受ける目標は、この時期には向いていません。
途中で「よくなった」と感じた時期があった
これは書いておきたいことです。
治療の内容が調整されたあと、夕方の症状が明らかに軽くなった時期がありました。2週間ほど、「これはもう治ったのでは」と思えるくらい楽でした。
でも、そのあとまた戻りました。
回復は一直線ではなく、上がったり下がったりしながら進みます。一時的によくなった時期を「完治」と受け取ってしまうと、下がったときのダメージが大きくなります。私はここで一度、かなり落ち込みました。
波があること自体は、珍しいことではないようです。良くなった日を喜ぶのはいいけれど、そこを基準にしないほうが、あとが楽でした。
2〜3か月ごろ:運動を始めた
症状が少し落ち着いてきてから、24時間営業の小規模なジムに入会しました。軽いランニングや腹筋などを合計45分ほど、週に3〜4回。半年ほど続けて、体重は6キロほど落ちました。
ポイントは「落ち着いてきてから」だったことです。症状が重い時期に同じことをしていたら、たぶん逆効果でした。うつの状態が重い時期に無理な運動を課すのは望ましくない、回復の兆しが見えてから短時間・低強度で始めるのがよい、という考え方が一般的なようです。
24時間営業を選んだのにも理由があります。日中は人が多くて気後れするけれど、深夜や早朝ならほとんど誰もいない。「人に会わなくていい」というだけで、行くハードルが大きく下がりました。
いちばん誤解しやすかったところ
この経過の中で、私が最も見誤ったのがここです。
| 日常生活 | 仕事 | |
|---|---|---|
| 求められる集中の長さ | 数分〜十数分 | 1時間以上を繰り返し |
| 相手の数 | 家族など少数 | 複数の相手と並行して |
| 締め切り | 基本的にない | 常にある |
| 中断できるか | いつでもやめられる | 途中でやめられない |
| 戻った時期 | 2〜3か月ごろ | さらにあと |
買い物に行けるようになり、家族と出かけられるようになると、周りからは元気そうに見えます。「そろそろ復帰できそう?」と聞かれることもあります。
でも、パソコンに向かって1時間集中する、複数の相手とやり取りする、締め切りのある仕事を段取りする——そういう「仕事のかたちの負荷」に耐えられるかは、まったく別の話でした。
この差を自分で理解していないと、動けるのに働けない自分を責めることになります。私は一度そこで落ち込みました。
そして、働き始めてから
正直に書きます。私は復職ではなく転職を選び、新しい職場でしばらく働いたあと、また同じ症状が戻ってきました。
原因は、いま振り返れば三つあったと思います。日常生活ができることを「治った」と解釈して次を始めたこと。転職そのものが大きな負荷だったこと。そして、断れない・抱え込むという働き方の癖は、職場が変わっても一緒についてきたこと。
ですから、この表の最後の行は「めでたく完了」ではありません。回復の経過というのは、たぶん一度きりの直線ではないのだと思います。
この表を、どう使ってほしいか
最後に、使い方の注意です。
- 期間を目標にしないでください。 「2か月で運動を始められるはず」と考えると、できなかったときに苦しくなります
- 順序のほうを参考にしてください。 生活リズム → 短い外出 → 軽い運動 → 集中を要すること、という順番は、多くの場合ひっくり返らないように思います
- 下がる時期があることを前提に。 一直線に良くなるものだと思っていると、波が来たときに「振り出しに戻った」と感じてしまいます
私の場合はこうでした、というだけの記録です。あなたの経過は、もっと早いかもしれないし、もっと時間がかかるかもしれません。他人のペースと自分を比べても、あまりいいことはありませんでした。
もし今、休職に入ったばかりなら
この表を見て「自分はこんなに順調に進んでいない」と感じた方がいたら、それは表の作りが悪いのだと思ってください。
表にすると、どうしても一本道に見えます。でも実際には、進んでは戻り、また進む、という繰り返しでした。「1か月前後」の行に書いたことができるようになったあとで、また最初の行に近い状態に戻った週もあります。
いま休職に入ったばかりで、何もできない日が続いているなら、それは遅れているのではありません。少なくとも私の場合は、その時期があったうえで、少しずつ戻ってきました。
焦って前の行に進もうとしたときほど、結果的に時間がかかりました。順番は飛ばせないのだと思います。
※この記事は個人の体験に基づくもので、治療の代わりになるものではありません。復職の時期や活動量については、必ず主治医・産業医と相談しながら決めてください。

